奈良町にぎわいの家 つし二階アート企画 vol.29
升田学 展|存在のフォルム、生命の境界線
Manabu Masuda Exhibition | Forms of Existence, Boundaries of Life
常々疑問に思うことがあります。生命とは何なのか。生きているとはどういうことなのか。
私は一本のワイヤーを曲げて、人や動物など生あるものを描いています。キャンパスでも紙でもなく、空中に描く線画です。その作品は「生きている」とまでは言わないまでも、その視線を感じ、肉感を伴っているように感じます。そのような作品を見るたびに、動くことはできなくとも、そこに生命があるのではないかと思うのです。
最近は仏画をワイヤーで写すというライフワークをしています。京都瑞泉寺が所有する、当麻曼荼羅図の版画で、未着色の珍しい線画の掛軸です。その阿弥陀如来さまや観音菩薩さまと対峙し、ワイヤーで写し取っていると、その眼差しを感じ取ることができます。そこに込められた愛情なのか憤りなのか、そういった感情やその教えが感じ取れるのです。これはある種の交流で、生命のやり取りとあまり変わらないのではと思うのです。
この度の新作は2点。特につし2階に飾られた作品は升田にとって新境地の作品です。中性的な人物が泡となって消え入りそうな姿で、「諸行無常」をイメージしています。この世の全てが流動し変化するものであることに気付き、悟りを開く直前の人物を自由な視点で描いています。
また今回は、2016年よりライフワークとして創作する「写仏」も飾りました。當麻寺より流布された「當麻曼荼羅図」の掛け軸をワイヤーで描きとっています。飾られたのは「阿弥陀如来」「観音菩薩」「勢至菩薩」の3点です。
その他、昨年静岡での展示で発表した作品群を中心に構成しました。日本家屋にも十分馴染みつつ見栄えする展覧会になりましたので、ご覧いただけると幸いです。