奈良町にぎわいの家 つし二階アート企画 vol.29
升田学 展|存在のフォルム、生命の境界線
Manabu Masuda Exhibition | Forms of Existence, Boundaries of Life
常々疑問に思うことがあります。生命とは何なのか。生きているとはどういうことなのか。
私は一本のワイヤーを曲げて、人や動物など生あるものを描いています。キャンパスでも紙でもなく、空中に描く線画です。その作品は「生きている」とまでは言わないまでも、その視線を感じ、肉感を伴っているように感じます。そのような作品を見るたびに、動くことはできなくとも、そこに生命があるのではないかと思うのです。
最近は仏画をワイヤーで写すというライフワークをしています。京都瑞泉寺が所有する、当麻曼荼羅図の版画で、未着色の珍しい線画の掛軸です。その阿弥陀如来さまや観音菩薩さまと対峙し、ワイヤーで写し取っていると、その眼差しを感じ取ることができます。そこに込められた愛情なのか憤りなのか、そういった感情やその教えが感じ取れるのです。これはある種の交流で、生命のやり取りとあまり変わらないのではと思うのです。